2. 『クリティカル・ワード ゲームスタディーズ』全体についてのコメント
🐫 本のコンセプトと編者としての感想
吉田さんによる「まえがき」にだいたいのことは書いてある。
フィルムアート社の「クリティカル・ワード」シリーズの本はすでに何冊か出ているが、本ごとにけっこう特徴がバラバラ。なので、ゲームスタディーズの本を新たに作るにあたって、その分野の特徴に即した独自性を出そうという方向になった。
『クリティカル・ワード ゲームスタディーズ(以下『CW:GS』と略)』の独自性
(a) 第1部は、同じトピックについて複数の書き手(編者)がそれぞれの見解を書くというスタイルをとった。
このスタイルは他では見ない試みで、それなりに目論見が成功したのではないかと思う。
否定的な意見(初学者からすると入門以前に話題が取っ散らかってしまう的な)も目にしたが、気にしていない。
ルドロジーvsナラトロジー論争やゲームの定義、言語による「ゲーム」を意味する語の射程など界隈の主要トピックがどんなものかということはわかったが、同じ項目をを複数の著者が執筆するという他ではみない取り組みが多面性、多層性を体現するというコンセプトは素晴らしいのだけれども初学者には足場を築く前に延々と拡散し続けるので読んでてしんどかった。
https://booklog.jp/users/meirin213/archives/1/4845921456
ちなみに、松永は当初は他の項目についても書く予定だったが、原稿書けない病のおかげで「ルール」「フィクション」「人工物」の3つだけになった。「人工物」は一番気合いが入っている。
(b) 第3部は、ゲームスタディーズの古典と呼べる文献を、その文献に詳しい人が一定の分量で紹介するというパート。
これもひいき目抜きにして、かなり成功しているのではないかと思う。ゲームスタディーズの初学者は、とりあえずこのパートに目を通してから有名な文献をがんばって読むかどうかを判断してもらえばよい。
小林編『デジタルゲーム研究入門』にも似たようなパートがあるが、それよりも分量が多く、内容が濃く、また古典と呼ぶに相応しい重要文献を取り上げているという点で、『CW:GS』の際立った独自性がある。
第3部での松永の担当は、カイヨワ本、ユール本、タヴィナー本。当初はスーツ本も担当予定だったが、原稿書けない病により、吉田さんに代わってもらった(申し訳なかった)。
(c) 第2部は、編者を含めたその道の専門家が、ゲームやビデオゲーム文化に関わるいろいろな事柄について2~4ページ程度で説明するというパート。
このパートは、「クリティカル・ワード」シリーズの他の本とおおむね同じ作りになっており、際立った独自性はない。よくある中項目~大項目主義の辞典の項目に近い。
クオリティは項目ごとにまちまちだが、いろいろな視点を盛り込めてよかったとは思う。
第2部にも松永担当の項目がある予定だったが、上記と同じ理由で項目自体がボツになった。
書く予定だった項目は「ジャンル」。ビデオゲームジャンルは他の芸術ジャンルと比べてどういう独特さを持つかという話と、ビデオゲームジャンルに注目する歴史記述のひとつアプローチとしてユールの議論を紹介するという感じの内容の予定だったと思う(記憶があやふや)。
※ローグライクのベルリン解釈が大好きなので、その話もちょっと混ぜたかった、
先の「言葉・概念・事柄」の区別に即して言えば、第2部の多くの項目がそれらを明確には区別していない文章になっているとは思う。編者としてその点に細かくつっこむことはしなかったが、「言葉・概念・事柄」の区別という点で不十分さを感じる項目は少なからずある。
※第2部については、その他にもいろいろな意味での難しさがあったが(どういう項目を立てるか、誰に頼むか、クオリティコントロールをどうするか、etc.)、面白い話でもないのでここでは説明しないでおく。
🐪 軽い確認の質疑
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